サスペンションのゴムはスプリングのような反発力がないので使ってみると
 調子がよく硬さの調節もワッシャーをかませることによって簡単に出来ました。

 マウンテンバイクのサスペンションにもゴムが使われています。エラストマーと
 呼ばれる物で、構造も簡単でコストもかからなく、故障も少ないので適して
 います。

 こうして改造をした3輪電動自転車は、K君にもなんとか使えたようです。
 「喜んで乗っている」ということで、こちらも嬉しかったですね。後日、お父さん
 お母さん、K君3人で来店されたことがありました。「頑張ってね」と言ったら
 ニコっと笑って「はい」とK君は答えてくれました。

 でも、私がK君を見たのは、それが最初で最後でした。

 それから数年「どうしてるのかな?」と思っていたんですが、ある日K君のお姉さん
 から電話がありました。「電動自転車使わなくなったので引き取ってもらえませんか?」

 「もう乗らないんですか?」「はい。使ってたものが亡くなったので・・・」
 ショックでしたね。「引き取りに伺います」と言ったものの、お母さんの顔見れるかなあ・・。

 引き取りに言ったとき、お母さんは「お金は要りません。使ってもらえる人がいれば使って
 もらって下さい。中古で売ってもらっても構いません。加藤さんの良い様にして下さい。」
 
 すぐに積んでそこを後にしました。こちらが泣きそうになってカッコ悪かったので。
 どうしようかと考えて、ウチのお客さんで養護学校の先生に「この電動自転車もらってくれ
 ない?タダでいいから。その代わり学校からK君に感謝状を作ってもらえないか」とお願い
 しました。

 数日後、感謝状を持ってK君の家に行きました。お母さんはとても喜んでくれました。
 「どうぞ」といって家の中に入れてくださいました。K君の写真の前で線香を上げました。
 養護学校を卒業したときの写真でした。普通の学校には行きたくても行かせてもらえ
 なかったそうです。

 お母さんは言いました。「加藤さん。私は今までTVや新聞で子どもを亡くした人のことを
 見ても人事だと思っていました。今でも自分の子どもがこんなことになるなんて信じられま
 せん。Kには生きていて欲しくて、つらい治療にも頑張れと言ってきましたが、それが自分の
 わがままだと思うこともありました。こんなに痛くてつらいなら、もう頑張らなくてもいいとも思い
 ました。」

 「生きてさえいてくれればいいと思います。勉強が出来ないとか走るのが人より遅いとか、
 背が小さいとか、そんなことはどうでも良いんです。生きていてくれることが、どれだけ幸せな
 ことなのかって思います。Kは痛いとか辛いとか一度も言いませんでした。でも最後にこんな
 事いいました。『おかあさん、僕もっと生きたかった。もっと、世の中のためになることをしたか
 った』って。私はKをもっと丈夫な体に生んであげられなかったことにKに申し訳なくて仕方が
 ありませんでした」

 『自分がこんな目にあって、初めて同じ境遇にある人の気持ちをわかるようになりました。
 Kは私たちに優しさを教えてくれたんです』と言いました。

 成人式で騒いでいる若者のニュースなどを見るたびにK君を思い出します。生きたくても
 生きられなかったK君を思い出します。お母さんは、それから養護学校で働いています。
 きっと、みんなに優しい気持ちで接していることと思います。

 それからまた数ヵ月後お母さんが「ウチの養護学校の生徒が育てたシクラメンです」といって
 シクラメンの花をくれました。お母さんとは、それっきり会っていませんが、元気かなあ?
 お父さんも元気かなあ?なんて思います・・。

 子どもには、思い切りあそばせて上げましょう。