「自転車の鍵無くしたから替えてくれ」と電話があり交換しに行きました。83歳のおばあちゃんです。「鍵をかけるときは、ここの所押さえながら押し込むとかかって、はずすときは鍵を刺して、ここを押さえると開くよ。わかった?やってみて」「わかった、わかった」次の日「鍵が開かない」と電話がありました。行ってみると、すぐ開いた。非常にシンプルな鍵なんですけど。

「かける時は、こうして、開けるときは・・・する。分かった?」

「ここを押しこむんだな?できんなあ」
「ここを押さえながら押し込むの」
「できん」
「押すだけじゃダメ。押さえながら押し込むの」
「こうか?」
「そうそう」

「はずすときはどうすんだ?」
「だから、鍵を刺してここを押すの」「違う引っ張るんじゃなくて押すの」「いやそこじゃなくて、ここ」
「ここか?開いた」
「もう一度やってみて」

「かけるときは、押し込めば良いんだろ?」
「だから~、押しながら押し込むの」

これを5回ほどやりました。

「じゃあ分かったね?帰るわ」
「にいちゃん、わるかったな。ありがと」83歳からすると私でも「にいちゃん」である。
「いいよ」
「父ちゃん元気か?」
「親父は死んで7年ちょっとになるよ」
「そうか。この自転車は父ちゃんから買ったやつだ」

5分ほど話・・

「じゃあ、帰るわ。もう一度忘れてるといかんから、鍵かけてみる?」
「ここを押すんだろ?」
「だから~、押さえながら押し込むの」

また5回ほどやってみる。

「じゃあ帰るわ」
「にいちゃん、ありがとな。とうちゃんは元気か?」

こうして時は過ぎていくのであった・・・。